黄斑は網膜の中心にあり、ものを見るために最も重要な部分です。
黄斑付近に毛細血管瘤などが多発したり血液成分が染み出たりするなどの理由により、黄斑にむくみを生じた状態が糖尿病黄斑浮腫です。
糖尿病黄斑浮腫は、糖尿病の患者さんのおよそ9パーセントに起きているといわれています。
ただし、黄斑も網膜の一部ですから、網膜症の起きている人ほど黄斑症が起きる率も高くなる関係があり、実際に増殖網膜症まで進行している人の黄斑浮腫発症率は、71パーセントに上ります。
黄斑の一部分に浮腫が生じた状態です。
視力の低下、または変視症といった症状が現れます。
黄斑を含む網膜に、浮腫が全体的に生じている状態です。
視力は徐々に低下し、そのまま放っておくと元に戻らなくなります。
糖尿病黄斑症の原因は大きく三つに分けられます。
網膜内の血流・血管障害があると、血管から血液中の成分が漏れ出したり、血管の一部が瘤のように膨れる毛細血管瘤が形成されたりして、浮腫を起こします。
網膜色素上皮は、脈絡膜から網膜へ必要以上の成分が入り込むのを防いだり、網膜内にある不要なものを脈絡膜へ戻したりする働きがあります。
糖尿病で高血糖状態が続くと、この網膜色素上皮がうまく機能しなくなり、網膜内に不要なものが溜まり、黄斑に浮腫が起きてきます。
硝子体は、加齢や高血糖によるタンパクの糖化などから、徐々に収縮することがあります。
硝子体が収縮すると、黄斑付近の網膜が、硝子体膜を介して牽引され、黄斑に浮腫が発生します。
眼底のようすを立体的に把握できる細隙灯顕微鏡を用いた検査や、造影剤を用いる蛍光眼底検査、OCTを用いた検査により、判定し、診断を行います。
毛細血管瘤や血液成分が漏れ出ている箇所を確認し、その箇所に瞳孔からレーザー光を当てて網膜を凝固するレーザー光凝固術を行います。
レーザー光凝固によって血液成分の漏れ出しが止まり、浮腫が改善すると視力も回復します。
トリアムシノロンというステロイド薬を眼の中に直接注射したり(硝子体注射)、眼球の後方(テノン嚢という所)に注射すると、血管から血液が漏れ出しにくくなったり、網膜の炎症が抑えられたりすることから浮腫が引きます。
一回の注射の効果は数か月ですから、病状によっては繰り返し注射します。
副作用で、眼圧が高くなり緑内障が発症・進行することもある点や、眼球の感染症に注意が必要です。
眼球内への注射のほうが即効性は、ありますが、注射後しばらく、視野に霧がかかったように見えることがあります。
糖尿病黄斑症は、視力への影響が大きな病気ですが、最初のうちは視力の変動があって、血圧や体調によって、また日によって、よく見えたり見えなかったりします。
これが原因で、光凝固のタイミングを逃し、局所性浮腫からびまん性浮腫に進行してしまう恐れもありますので、注意が必要です。
視力が低下してから治療を受けるのでなく、視力が低下する前から定期的に検査を受け、必要な時期に適切な治療を受けられるようにしておくこと、それが糖尿病黄斑症から眼を守る最善の手段です。